こもる湿気と溜まらない湿度

「快適な湿度」を保つのはなかなか難しいものです。同じ水分でも言葉による表現の仕方によって捉え方が変わってくるのがそれを象徴しています。私たちにとって不要な量の空気中の水分は「湿気」と呼ばれます。「湿気がこもる」とよく言います。それは夏に近い時期、「梅雨」によく使う言葉です。また、スナック類などが水分をはらんでしまう状態を「湿気る」と言ったりするのも象徴的です。「湿気」は私たちにとっては忌むべき存在として、出来れば「除湿したい」空気中の水分ということになります。

「湿気を避けるためには」などという観点で生活の知恵が紹介されることも、季節によってはあるのです。寒い時期にはあれほど焦がれた「快適な湿度」は、夏場は邪魔なようです。それは私たちの体が「汗」をかき、それでなくても体が湿った状態になってしまうからです。時にそれは「不快指数」という言葉でも表現されます。元は同じはずのものなのですが、私たちの体が感じる「快適」という状態に合わせて使い分けるものです。確かに、気温が高い状態では水分はより多く空気中に存在します。そしてそれを媒介にして「カビ」などが繁殖することもあります。浴室の黒ずみなどは、過剰な「湿気」が原因として生まれた副産物です。

湿気はこもるのです。浴室などの湿気は換気などを行わない限り、ずっとこもってしまいます。その状態がカビの発生を引き起こすことになります。だから私たちはそれを嫌います。

対して、冬場に求める空気の潤いは、閉じ込めておくことができません。それは空気の温度が低いからです。温度か低いと空気中に存在できる水分の限界量が少なくなってしまうからです。だから乾燥します。乾燥した状態は、私たちの体にさまざまな影響を与えるのです。冬場は潤いが欲しいのです。

私たちはわがままなものです。水分が空気中に存在し、その限界量が気温に左右されるのは、科学的な「原理」に基づいています。季節のある土地に住んでいる限り、気候は変化します。そしてそれを楽しむ感覚もあるのです。ですが、身体的な「不愉快」という状態は我慢ができないのです。だから快適な状態を作り出すため、さまざまな工夫を凝らします。それがエアコンなどの空調機器であり、加湿器や除湿機なのです。原理を理解しているからこそ、それが「調節」できるようになったのです。これは他の動物では出来ないことです。

水蒸気という気体は、温室効果ガスの代表でもあります。空気中の水分含有量は、体感温度すらも左右するのです。私たちは「適度な」潤いを求めています。ですが、地球環境を考えると今以上に水蒸気が大気に存在してしまうと地球の温暖化が進むのでしょう。地球に存在する水分の量は限られています。それがどのような配分で存在しているのか、ということによって、地球全体の気候を左右するほどの影響力があるのです。

空気と水分の関係を学ぶと、不思議なもので「自然」に帰結します。生物が存在できる状態は、この宇宙では奇跡的な状態であるということに帰結するのです。その中で快適さを求める私たちが、少し滑稽に思えてしまうほどです。湿度と湿気、言葉は違っても同じことを指しています。

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